倉庫業務で発生しやすい課題とは
倉庫業務の効率化を進めるうえで、まず現場で起きている課題を正確に把握することが出発点となります。課題が曖昧なまま施策を導入しても、期待する効果は得られません。ここでは、多くの倉庫現場に共通する代表的な3つの課題を紹介します。
- 人手不足と作業負荷の偏り
- 作業の属人化と品質のばらつき
- 在庫情報のリアルタイム把握が困難
人手不足と作業負荷の偏り
物流業界では慢性的な人手不足が続いており、倉庫現場でも必要な人員を確保できないケースが増えています。とくに繁忙期と閑散期の差が大きい倉庫では、適切な人員配置が難しく、特定のスタッフに作業負荷が集中しがちです。
ベテランスタッフへの依存度が高い現場では、その人材が不在になると業務全体が停滞するリスクも抱えています。
こうした状況を放置すると、離職率の上昇や品質低下を招くため、早期の対策が求められます。
作業の属人化と品質のばらつき
倉庫業務における属人化とは、特定の担当者しか作業手順やルールを把握していない状態を指します。マニュアルが未整備の現場では、担当者ごとに作業方法が異なり、検品精度やピッキング速度にばらつきが生じやすい傾向にあります。
属人化が進むと、新人教育にかかるコストと時間が増大し、ヒューマンエラーの発生率も高まります。
作業品質を安定させるためには、業務プロセスの標準化と、誰がおこなっても同じ結果を出せる仕組みづくりが不可欠です。
在庫情報のリアルタイム把握が困難
紙の台帳やExcelで在庫管理をおこなっている倉庫では、入出荷のたびに手動で記録を更新する必要があり、実在庫と帳簿上の数量にズレが生じやすくなります。在庫差異が蓄積すると、欠品による出荷遅延や過剰在庫による保管コストの増大を引き起こしかねません。
リアルタイムでの在庫把握ができなければ、的確な発注判断や出荷計画の立案も困難です。
在庫の可視化は、倉庫業務全体の効率を底上げするうえで最も優先度の高い取り組みといえます。
倉庫業務を効率化する方法
倉庫業務の課題を解決するためには、現場改善からデジタル化まで複数のアプローチを組み合わせることが重要です。自社の業態や規模に合った方法を選択し、段階的に取り組むことで持続的な改善効果を得られます。ここでは、代表的な6つの効率化方法を紹介します。
- 5S活動による倉庫環境の整備
- 倉庫レイアウト・動線の最適化
- 作業マニュアルの整備と標準化
- ピッキング方法の最適化
- マテハン機器・自動化設備の導入
- WMS(倉庫管理システム)の導入
5S活動による倉庫環境の整備
5S活動とは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5つの要素から成る職場改善手法です。倉庫現場では、不要な資材や使用頻度の低い商品を整理し、作業スペースを確保することが効率化の第一歩となります。
5S活動は大掛かりな設備投資を必要としないため、コストを抑えながらすぐに着手できる点が大きなメリットです。
加えて、倉庫内の動線を意識した配置ルールを設けることで、作業者の移動距離が短縮され、日々の業務効率が向上します。
倉庫レイアウト・動線の最適化
倉庫レイアウトには、入荷口と出荷口が対面に位置するI型レイアウトと、同じ側に配置するU型レイアウトの2つが代表的で、取り扱う商品の特性や出荷頻度に応じて、最適なレイアウトを選択する必要があります。
出荷頻度の高い商品を出荷口の近くに配置し、作業者が一筆書きで移動できる動線を設計することで、ピッキング時の歩行距離を大幅に削減可能です。
レイアウトの見直しは定期的におこなうことが望ましく、季節変動や取扱商品の変化に合わせて柔軟に調整することが成果を持続させるポイントとなります。
作業マニュアルの整備と標準化
倉庫業務の標準化を実現するには、作業手順を明文化したマニュアルの整備が欠かせません。写真や図解を用いて視覚的にわかりやすくまとめることで、新人スタッフでも短期間で作業を習得できるようになります。
マニュアルの整備により属人化が解消され、担当者による品質のばらつきを抑制できます。
さらに、現場の状況や業務プロセスの変更に合わせてマニュアルを定期的に更新する運用体制を構築することも重要です。
ピッキング方法の最適化
ピッキング方法には、1件の注文ごとに商品を集めるシングルピッキングと、複数の注文分をまとめて集めるトータルピッキングがあります。出荷件数が少ない場合はシングルピッキング、大量出荷の場合はトータルピッキングが適しており、商品特性や出荷量に応じた使い分けが求められます。
ピッキング方法の最適化は、作業者の歩行距離削減と作業時間短縮に直結するため、倉庫効率化の中でもとくに費用対効果の高い施策です。
ゾーンピッキングやデジタルピッキングの導入も含め、自社の出荷パターンに合った手法を検討することが成果につながります。
マテハン機器・自動化設備の導入
フォークリフト、搬送コンベア、AGV(無人搬送車)やAMR(自律移動ロボット)といったマテハン機器の導入は、作業者の身体的負荷を軽減しながら処理速度を向上させる有効な手段です。とくに重量物の搬送や反復的な作業が多い倉庫では、自動化設備の効果が顕著に表れます。
マテハン機器の導入にあたっては、初期投資額だけでなく、運用コストや保守体制を含めた投資対効果を慎重に検討する必要があります。
段階的に自動化を進めることで、現場スタッフの負担を抑えつつスムーズな移行を実現できます。
WMS(倉庫管理システム)の導入
WMS(倉庫管理システム)は、入荷から出荷までの倉庫業務を一元管理するシステムです。バーコードやハンディターミナルと連携することで、リアルタイムでの在庫管理や検品作業の自動化が実現します。
WMSの導入により、業務の標準化と誤出荷防止を同時に達成でき、倉庫全体の生産性向上に大きく貢献します。
クラウド型のWMSであれば、複数拠点の在庫を一元管理できるため、多拠点展開する企業にもとくに有効な選択肢です。
業務フロー別に見る倉庫効率化のポイント
倉庫業務は入荷から出荷まで複数の工程で構成されており、各工程に適した効率化策を講じることで全体最適化が実現します。一部の工程だけを改善しても、前後の工程がボトルネックになれば効果は限定的です。ここでは、主要な5つの業務フローごとのポイントを解説します。
- 入荷・検品の効率化
- 保管・ロケーション管理の効率化
- ピッキング・仕分け作業の効率化
- 出荷・検品の効率化
- 棚卸作業の効率化
入荷・検品の効率化
入荷・検品工程では、バーコードスキャンによる検品の導入が精度向上の鍵となります。入荷予定データとの照合を自動化することで、目視確認に頼っていた従来の方法と比べて検品ミスを大幅に削減できます。
入荷時間をサプライヤーと事前に調整し、入荷の集中を分散させることも、作業効率を安定させるうえで効果的な施策です。
入荷段階での精度が後工程すべてに影響するため、検品体制の整備は最優先で取り組むべき工程といえます。
保管・ロケーション管理の効率化
保管エリアの管理方法には、商品ごとに固定の棚を割り当てる固定ロケーションと、空いている棚に自由に格納するフリーロケーションの2つがあります。商品の種類や出荷頻度に応じて、両方式を併用するのが実務上は効果的です。
先入れ先出し(FIFO)の徹底は、消費期限のある商品を扱う倉庫ではとくに重要であり、ロケーション管理の精度がそのまま廃棄ロスの削減につながります。
加えて、デッドスペースを解消するための棚の高さ調整やラック配置の見直しをおこなうことで、保管効率を最大化できます。
ピッキング・仕分け作業の効率化
ピッキング作業の効率化には、ピッキングリストの最適化が基本です。出荷先ごとではなくエリアごとにリストを作成するゾーンピッキングを導入すれば、作業者の移動距離を大幅に短縮できます。
ハンディターミナルやタブレットを活用したデジタルピッキングは、リスト確認の時間を削減し、ピッキング精度の向上にも寄与します。
仕分け作業においても、出荷先別の仕分けエリアを明確に区分し、作業動線が交差しないレイアウトを設計することが生産性向上につながるポイントです。
出荷・検品の効率化
出荷工程では、バーコード照合による検品がもっとも確実な誤出荷防止策です。たとえば、出荷指示データと実際の梱包内容をシステム上で自動照合することで、ヒューマンエラーによる誤配送リスクを最小限に抑えられます。
出荷指示の自動化や帳票・ラベル発行の効率化も、出荷リードタイムの短縮に直結する重要な取り組みです。
WMSと連携した出荷検品体制を構築することで、作業スピードと正確性の両立が実現します。
棚卸作業の効率化
棚卸作業は、従来の一斉棚卸から循環棚卸へ移行することで、業務負荷の分散と精度向上を同時に実現できます。とくに循環棚卸では、エリアや商品カテゴリごとに分割して日常的にカウントをおこなうため、大規模な業務停止が不要です。
ハンディターミナルを使った棚卸のデジタル化により、カウントデータの即時反映と差異分析が可能になり、棚卸にかかる時間を大幅に短縮できます。
リアルタイムの在庫データとの差異を定期的に分析し、原因を特定・改善するPDCAサイクルを回すことが、在庫精度の継続的な向上につながります。
倉庫業務の効率化に成功した事例
実際に倉庫業務の効率化に取り組んだ企業の事例を知ることで、自社での施策立案に役立てられます。WMSの導入を中心に、業務標準化や生産性向上を実現した3つの事例を紹介します。
- 業務標準化により商品の探索時間を10分の1に短縮(戸田倉庫様)
- 画像検品システムの導入で出荷生産性が1.7倍に向上(ベルーナ・ジーエフ・ロジスティクス様)
- 6拠点のWMSを一本化し出荷開始を2時間前倒し(ランクアップ様)
業務標準化により商品の探索時間を10分の1に短縮(戸田倉庫様)
戸田倉庫様は、化学品を扱う倉庫事業を展開する企業です。従来は自社独自の管理システムのみで運用しており、商品の所在確認に1件あたり約10分を要していました。とくに経験の浅いスタッフは商品を探すだけで多くの時間を費やし、作業効率が大きな課題となっていました。
しかし、WMS(COOOLa)の導入によりロケーション管理を体系化した結果、商品の探索時間は約1分にまで短縮され、棚卸作業も数日がかりから1日で完了するようになりました。
さらに、導入後は誤出荷ゼロを達成しています。パソコン操作に不慣れなスタッフでも直感的に使えるシステム設計が、現場定着の決め手となった事例です。
出典:業務標準化により商品の探索時間を10分の1に短縮|戸田倉庫 様
画像検品システムの導入で出荷生産性が1.7倍に向上(ベルーナ・ジーエフ・ロジスティクス様)
ベルーナ・ジーエフ・ロジスティクス様は、化粧品や健康食品などを扱う3PL事業者です。通販業界の出荷数量増加と同梱物の複雑化に対応するため、WMSと連携した物流画像検品システムを導入しました。導入の結果、1時間あたりの出荷作業数が280個から500個へと1.7倍に向上し、同等の出荷量を3名少ない体制で処理できるようになりました。
画像認識技術を活用しているため、バーコードが付いていない商品でも検品が可能な点も特筆すべきメリットです。新商品のマスタ登録もシステムに一度通すだけで自動完了するため、運用負荷を最小限に抑えられます。
出典:画像検品システムで出荷作業の生産性を向上|ベルーナ・ジーエフ・ロジスティクス 様
6拠点のWMSを一本化し出荷開始を2時間前倒し(ランクアップ様)
化粧品通販を展開するランクアップ様は、6拠点の委託先倉庫でそれぞれ異なる5種類のWMSを使用しており、在庫管理や拠点間の連携に多大な時間と労力がかかっていました。各拠点の在庫数や出荷数を統合的に把握できないことが、長年の課題となっていたのです。
この対策として導入したWMS(COOOLa)への一本化により、6拠点の入荷・出庫・在庫・棚卸を一元管理できるようになり、出荷指示データの自動連携によって出荷開始時間を2時間前倒しすることに成功しました。
拠点間の在庫移動や、台風などの災害時に出荷元を別拠点へ振り替える運用も容易になり、事業継続性の観点でも大きな改善効果を得ています。
出典:6拠点の倉庫管理システムをCOOOLaに一本化|ランクアップ 様
まとめ
倉庫業務の効率化は、人手不足への対応、作業品質の安定化、在庫精度の向上といった複数の経営課題を同時に解決する取り組みです。5S活動やレイアウト改善といった現場施策から、WMS導入によるデジタル化まで、自社の規模や業態に合った方法を段階的に取り入れることが成功の鍵となります。
業務フローごとに課題を特定し、入荷から出荷まで一貫した改善を進めることで、倉庫全体の生産性を底上げできます。今回紹介した事例のように、WMSの導入は業務標準化や誤出荷防止、複数拠点の一元管理など幅広い効果をもたらします。
まずは自社の倉庫業務における課題を洗い出し、優先度の高い工程から改善に着手してみてください。


















