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物流のAI活用事例4選!在庫管理・配送・倉庫作業の現場で何が変わったか

2026.03.30

倉庫業務・管理

EC需要の急拡大とトラックドライバーの時間外労働規制(いわゆる「2024年問題」)が重なり、物流現場の人手不足はかつてないほど深刻化しています。従来の人海戦術では限界を迎えつつある中、AIを活用して業務の自動化・最適化が加速しています。

本記事では、物流でAIが注目される背景から、活用が進む4つの業務領域の概要、国内大手4社の具体的な導入事例、成功させるためのポイントまでを体系的に解説します。物流のAI活用を検討している物流・倉庫担当者の参考にしてください。

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物流業界でAIが注目される背景

物流業界は現在、「2024年問題」「EC拡大」「人手不足」という構造的課題に直面しています。2024年4月に施行されたドライバーの時間外労働規制により輸送力の低下が顕在化し、一方でEC市場の拡大が宅配便の取扱量を押し上げ続けているのが実情です。

そのうえ、少子高齢化による労働人口の減少が倉庫作業員やドライバーの確保をさらに難しくしており、人の力だけでは現場を回すことができない状況が広がっています。

こうした構造的な課題を解決する手段として、需要予測・自動検品・配送最適化・事務自動化といった幅広い領域でAIの活用が急速に進んでいます。

物流のAI活用が進む4つの業務領域

物流現場でAIが導入されている業務は多岐にわたります。とくに効果が高く、国内外の企業で導入実績が積み重なっている4つの領域を解説します。

  • 在庫管理・需要予測
  • 倉庫内作業(ピッキング・検品・荷積み)
  • 配送ルート最適化
  • 事務・データ入力の自動化

在庫管理・需要予測

在庫管理における需要予測は、AIの活用効果が最も顕著に現れる領域のひとつです。過去の販売実績・季節変動・天候・イベント情報などの多様なデータを機械学習モデルに学習させることで、経験と勘に依存していた発注業務をデータドリブンなプロセスに転換できます。

AI需要予測の精度が上がることで、過剰在庫や欠品のリスクが大幅に低減し、在庫保管コストや緊急輸送の発生件数も削減可能なことに加えて、AIは予測結果をもとに発注タイミングと発注量を自動で算出するため、担当者の業務負担も軽減されます。

属人的な運用では担当者によって予測精度にばらつきが生じやすく、引き継ぎ時にサービスレベルが低下するリスクもあります。AIの導入によりこうした属人性を排除し、安定した在庫管理体制を構築することが可能です。

倉庫内作業(ピッキング・検品・荷積み)

倉庫内の作業は、労働集約的で属人性が高いため、AIとロボティクスの組み合わせによる自動化が急速に進んでいます。ピッキング支援では、AIが最適な動線をリアルタイムで算出し、作業員やロボットの移動距離を最小化できるのが特徴です。

検品工程では、画像認識AIが商品の品番・数量・外観異常を自動で判定し、目視確認に依存していたヒューマンエラーを大幅に削減します。繰り返し作業による集中力の低下や個人差に左右されず、24時間安定した品質で検品作業を継続できる点が、AI自動検品の最大のメリットです。

荷積み工程においても、AIが荷物のサイズ・重量・形状を瞬時に判断し、トラック庫内への最適な積み込み順序を決定するロボットの開発が進んでいます。現場の熟練者が長年かけて習得した判断ノウハウを、AIが学習・代替する取り組みです。

配送ルート最適化

配送ルート最適化は、AIが最も早い段階から実用化が進んだ領域のひとつです。リアルタイムの交通情報・気象データ・配送先の住所・積載量などを統合的に分析し、最も効率的な配送順序とルートを自動で生成します。

従来は担当ドライバーの経験や勘に依存していたルート設計を、AIがデータに基づいて客観的に最適化することで、走行距離・燃料費・配送時間の削減が可能です。また、再配達の削減に向けた受け取り時間の予測や、繁忙期の配車計画の自動立案にもAIが活用されています。

さらに近年は、自律走行型の無人配送ロボットが都市部の公道での商用運用を始めるなど、ラストワンマイルの配送にもAIが本格的に進出しています。

事務・データ入力の自動化

物流業務では、配送伝票・納品書・帳票類の処理など、大量の紙ベースのデータ入力が発生します。

たとえば、AI-OCR(AIを活用した光学文字認識技術)を活用することで、こうした手作業を自動化し、入力工数と入力ミスを同時に削減できます。AI-OCRは、手書き文字や修正のある帳票、複写式伝票の文字擦れといった、従来のOCRでは対応が難しかったケースにも高精度で対応し、人手による補正の必要性を大幅に低下させます。

繁忙期に処理量が急増する物流業界において、処理能力をスケールさせながら品質を維持できる点は大きな強みです。

削減された入力工数は、より付加価値の高い業務へと再配分でき、処理データを蓄積して需要予測などの次のAI活用につなげることも可能です。

物流AI活用の国内事例

AIを活用した物流改革は、国内大手企業でも着実に成果を上げています。業種や課題はそれぞれ異なりますが、共通するのは「属人化の排除」と「データに基づく業務最適化」です。ここでは、代表的な4つの事例を紹介します。

  • 事例① アスクル:AI需要予測で横持ち指示工数を約75%削減
  • 事例② 佐川急便:AI-OCRで配送伝票入力を自動化し月間8,400時間を創出
  • 事例③ 佐川急便:国内初・AI搭載荷積みロボットの開発に挑戦
  • 事例④ 楽天:無人配送ロボットを東京都内で商用運用開始

事例① アスクル:AI需要予測で横持ち指示工数を約75%削減

アスクルは、物流センターと補充倉庫間の商品在庫移動(横持ち)の計画立案にAI需要予測モデルを自社開発し、全国物流拠点への展開を開始しました。従来は担当者がこれまでの経験と知見をもとに手作業で計画を立てており、担当者によって予測精度にばらつきが生じ、緊急の横持ち輸送が頻繁に発生していたことが課題でした。

AI需要予測モデルの導入により、「いつ・どこからどこへ・何を・いくつ運ぶか」をAIが自動で指示できるようになり、ALP横浜センターにおいて横持ち指示作成工数を約75%/日削減することに成功しています。入出荷作業工数も約30%/日、フォークリフト作業も約15%/日の削減を実現しました。

また、賞味期限や使用期限のある「期限管理品」を補充倉庫で適切に管理できるようになり、センター内での無駄な商品移動も大幅に削減されました。商品数の増加や担当者変更があっても、AIによるデータドリブンな運用で安定したサービスレベルを維持できる体制が整っています。

出典:物流センターと補充倉庫間の商品横持ち計画にAI需要予測モデルを活用|ASKUL Transformation with Digital

事例② 佐川急便:AI-OCRで配送伝票入力を自動化し月間8,400時間を創出

佐川急便は、グループ会社のSGシステムおよびフューチャーアーキテクトと共同で、配送伝票のサイズ・重量入力業務を自動化するAI-OCRシステムを開発し、2019年7月に本稼働させました。繁忙期には1日最大100万枚にも上る配送伝票を手作業でシステムに入力していた業務が、AIによって自動化されたことで、月間約8,400時間の作業時間を削減しています。

AIシステムの手書き数字の認識精度は99.995%以上に達しており、丸囲みの数字や取り消し線で修正された文字、複写式伝票の文字擦れにも対応します。従来のOCRでは難しかった現場特有の「ばらつき」にも対応できるよう、佐川急便の膨大な伝票データをAIに学習させた点が、高い精度の実現につながっています。

この取り組みで培ったAI技術はSGホールディングスグループ各社にも展開され、帳票入力業務のAI化が広がっています。また、伝票のデータ化により蓄積されたデータを需要予測などの上流工程に活用する動きも進んでいます。

出典:佐川急便の配送伝票入力業務を自動化するAIシステムが本稼働|フューチャー株式会社プレスリリース

事例③ 佐川急便:国内初・AI搭載荷積みロボットの開発に挑戦

佐川急便はSGホールディングス・住友商事・米国のDexterity社と4社共同で、2023年12月から「AI搭載の荷積みロボット」の実証実験プロジェクトを発足しました。トラックの庫内に最適な形で荷物を積み込めるAI搭載ロボットの開発は、国内物流業界で初めての取り組みです(2023年12月時点・佐川急便調べ)。

荷積み作業は荷物のサイズ・形状・重量・梱包状態を瞬時に判断したうえで最適な積み順を決定する必要があり、熟練の作業者が長年かけて習得する高度なノウハウが求められます。このノウハウをAIに学習させることで、属人化した作業の自動化と省人化を目指しています。

Dexterityの米国施設での開発と、SGホールディングスの大規模物流センター「Xフロンティア」での実オペレーション検証を経て、早期の実用化を進める予定です。今後新設される佐川急便の大規模中継センターへの導入も検討されており、ドライバーや積み込み作業者の負担軽減に向けた取り組みが続いています。

出典:働き手不足を解消する業界初「AI搭載荷積みロボット導入」への挑戦|佐川急便

事例④ 楽天:無人配送ロボットを東京都内で商用運用開始

楽天グループは2024年11月6日、自動配送ロボットによる商品配送サービス「楽天無人配送」を東京都中央区晴海周辺で正式に開始しました。監視員を付けずに都心部の公道上で商品を無人配送するのは、楽天として初の取り組みです。スマートフォン専用サイトから注文すると、米Cartken社製の自動配送ロボットがスターバックス・スーパーマーケット文化堂・吉野家の3店舗から商品を受け取り、指定された62カ所のお届け場所まで最短30分で届けます。

配送中はロボットの現在地や到着予定時刻をスマートフォンで確認でき、到着時は暗証番号で商品を受け取る仕組みで、完全無人によるラストワンマイル配送を実現しています。2023年の道路交通法改正により自動配送ロボットが「遠隔操作型小型車」として定義されたことが、公道での商用運用を可能にする法的根拠となりました。

2025年2月には対象店舗と配送エリアを拡大し、新たにAvride社製ロボットも導入するなど、サービスを継続的に拡充しています。物流の2024年問題への対応策として、無人配送ロボットによるラストワンマイルの自動化モデルを確立しようとする動きです。

出典:自動配送ロボットによる商品配送サービス「楽天無人配送」提供開始|楽天グループ株式会社

AI導入を成功させるためのポイント

物流へのAI導入は、技術の選定だけでなく、導入プロセスの設計が成否を左右します。事例に共通する成功要因を整理すると、課題の明確化・段階的な展開・データとシステム基盤の整備という3点に集約できます。ここでは、AI導入を成功させるための具体的なポイントを解説します。

  • 解決すべき課題とKPIを先に定める
  • スモールスタートで現場の定着を確認する
  • データ整備と既存システムとの連携設計

解決すべき課題とKPIを先に定める

AIを導入する前に「何のために導入するのか」を組織内で明確にすることが、成功の第一歩です。欠品率の削減・ピッキング工数の短縮・伝票処理時間の削減など、解決したい課題を具体的に絞り込み、成果を定量的に測定するためのKPIをあらかじめ設定します。

課題が曖昧なままAIを導入しても、現場での適用範囲が定まらず、効果測定も困難になるため、投資対効果の見極めができません。アスクルの事例でも、「横持ち計画の属人化と予測精度のばらつき」という具体的な課題を起点に、AI需要予測モデルの適用範囲を「横持ち指示」に絞り込んだことが、短期間での高い成果につながりました。

KPIの設定は、導入後の改善サイクルを回すためにも重要です。数値で効果を可視化することで、横展開や追加投資の判断を根拠をもっておこなえます。

スモールスタートで現場の定着を確認する

AI導入の際は、一度にすべての業務へ展開するのではなく、影響範囲を限定した小規模な検証から始めることが重要です。まず特定の拠点・工程・商品カテゴリに絞って試験運用し、AIの精度と現場スタッフの習熟度を確認してから、段階的に対象を拡大していく進め方が成功率を高めます。

スモールスタートで得られた現場の知見は、本格展開時の運用ルール策定やAIモデルのチューニングに活用でき、全体導入時のリスクを大幅に低減する効果があります。アスクルが東日本の一部物流センターでのPoC結果をもとに全国展開を決定した流れは、この進め方の典型的な成功例です。

また、現場スタッフへの研修と運用マニュアルの整備も並行して進めることが必要です。AIの提案を正しく活用できる体制が整って初めて、導入効果が最大化されます。

データ整備と既存システムとの連携設計

AIの予測精度と自動化精度は、学習データの質と量に直結します。過去の販売データ・入出荷記録・在庫データなどを十分に蓄積し、フォーマットを統一してクレンジングをおこなうことが、AI稼働前の重要な準備工程です。

また、AIシステムは単独で機能するものではなく、WMSや基幹システム・TMSなど既存のシステムと連携することで効果を発揮します。連携設計を後回しにすると、AIが出した提案を現場に反映するための工数が別途発生し、自動化の恩恵が半減するリスクがあります。

データの蓄積と連携設計は、AI導入の検討段階から並行して進めることが求められます。継続的にデータを更新し、AIモデルを現場の変化に合わせてチューニングし続けることで、導入後も効果が向上し続ける体制が整います。

まとめ

物流業界では、2024年問題・EC拡大・人手不足という構造的な課題を背景に、在庫管理・倉庫内作業・配送ルート・事務自動化の各領域でAI活用が急速に進んでいます。アスクルのAI需要予測・佐川急便のAI-OCRや荷積みロボット・楽天の無人配送ロボットといった国内大手の事例は、AIが現場の「属人化」と「非効率」を解消し、具体的な数値成果をもたらすことを示しています。

AI導入を成功させるためには、解決すべき課題とKPIを先に定め、スモールスタートで現場の定着を確認しながら段階的に展開することが重要です。加えて、AIが学習・活用するためのデータ整備と既存システムとの連携設計も、導入前から並行して取り組むべき準備工程です。

物流のAI活用は特定の大企業だけの取り組みではなく、課題と導入規模に合わせた選択肢が広がっています。本記事で紹介した事例とポイントを参考に、自社の現場課題に合ったAI活用の第一歩を検討してみてください。

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