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棚卸資産の評価方法とは?原価法・低価法の違いと6つの計算方法を徹底解説

2025.12.23

倉庫業務・管理

棚卸資産の評価方法は、企業の利益計算や税務申告に直接影響を与える重要な会計処理です。評価方法によって期末の在庫金額が変わり、結果として売上原価や利益額も異なってきます。しかし、原価法や低価法といった基本的な考え方から、先入先出法や移動平均法などの具体的な計算方法まで、選択肢が多く理解が難しいと感じる方も少なくありません。

本記事では、棚卸資産の評価方法について、原価法と低価法の違い、6つの具体的な計算方法、そして自社に適した方法の選び方まで体系的に解説します。 在庫管理の最適化や経営判断の精度向上を目指す際の参考にしてください。

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棚卸資産とは?

棚卸資産は企業の財務状況を把握するうえで欠かせない勘定科目であり、その評価方法は経営判断に大きな影響を及ぼします。適切な評価をおこなうためには、まず棚卸資産の基本的な概念と、なぜ評価方法が重要なのかを理解しておく必要があります。ここでは、棚卸資産の基礎知識について解説します。

  • 棚卸資産の定義と種類
  • 棚卸が必要な理由
  • 評価方法が経営に与える影響

棚卸資産の定義と種類

棚卸資産とは、企業が販売目的で保有する商品や製品、製造過程にある仕掛品、原材料などの資産を指します。貸借対照表では流動資産に分類され、企業の短期的な支払能力を示す指標としても活用されるものです。

具体的には、以下のような項目が該当します。

  • 商品
  • 製品
  • 半製品
  • 仕掛品
  • 原材料
  • 貯蔵品

 小売業であれば販売用の商品、製造業であれば完成品や製造途中の仕掛品が主な対象となります。

棚卸資産の範囲は業種によって異なるため、自社が保有する資産のうち何が該当するのかを正確に把握しておくことが重要です。

棚卸が必要な理由

棚卸は、帳簿上の在庫数量と実際の在庫数量を照合し、正確な資産価値を把握するために実施します。帳簿と実在庫の差異を放置すると、財務諸表の信頼性が損なわれ、経営判断に悪影響を及ぼす恐れがあります。

また、棚卸は期末の売上原価を算出するために不可欠なプロセスです。 売上原価は「期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高」で計算されるため、期末の棚卸資産を正確に評価しなければ、利益額も正しく算出できません。

さらに、税務申告においても棚卸資産の評価額は重要な意味を持ちます。適切な評価をおこなわなければ、税務上の問題が生じる可能性もあるのです。

評価方法が経営に与える影響

棚卸資産の評価方法によって期末在庫の金額が変わるため、売上原価や利益にも影響が及びます。評価額が高ければ売上原価は低くなり利益は増加し、評価額が低ければ売上原価は高くなり利益は減少する関係にあります。

つまり、評価方法の選択は単なる会計処理の問題ではなく、経営戦略や税務対策にも関わる重要な意思決定といえます。 物価上昇局面と下落局面では、同じ評価方法でも利益への影響が異なる点にも注意が必要です。

適切な評価方法を選択することで、実態に即した財務情報を把握し、より精度の高い経営判断が可能となります。

棚卸資産の評価方法【原価法と低価法】

棚卸資産の評価方法は、大きく「原価法」と「低価法」の2つに分類されます。それぞれの特徴を理解したうえで、自社の状況に適した方法を選択することが求められます。ここでは、原価法と低価法の基本的な考え方と使い分けについて解説します。

  • 原価法とは
  • 低価法とは
  • 原価法と低価法の使い分け

原価法とは

原価法は、棚卸資産を取得原価で評価する方法です。商品や原材料を仕入れた際の購入価格をもとに在庫の価値を算出するため、計算がシンプルで理解しやすいという特徴があります。

原価法では、市場価格が下落しても帳簿上の評価額は変わりません。 そのため、実際の価値よりも高い金額で資産計上される可能性があり、含み損が発生するリスクがあります。

原価法を採用する場合でも、取得原価の算出方法として先入先出法や移動平均法など複数の手法から選択する必要があります。

低価法とは

低価法は、取得原価と期末時点の時価を比較し、いずれか低い方の金額で棚卸資産を評価する方法です。会計基準では、棚卸資産の評価において低価法の適用が原則とされています。

低価法を採用することで、市場価格の下落による損失を早期に認識し、より保守的な財務諸表を作成できます。 在庫の実態価値を適切に反映するため、投資家や金融機関からの信頼性向上にもつながるのが利点です。

ただし、時価の算定には一定の手間がかかるため、管理負担が増加する点は考慮しておく必要があります。

原価法と低価法の使い分け方

会計基準上は低価法が原則とされていますが、税務上は原価法も認められており、届出によって選択が可能です。企業の経営方針や業種特性に応じて、適切な方法を選択することが重要となります。

価格変動が激しい商品を扱う場合は、低価法を採用することで実態に近い財務状況を把握しやすくなります。 一方、価格が安定している商品を扱う場合は、原価法でも大きな問題は生じません。

また、税務面では低価法を採用することで、市場価格が下落した際に評価損を計上し、課税所得を減少させられる可能性があります。経営戦略と税務戦略の両面から検討を進めることが求められます。

原価法における6つの評価方法

原価法を採用する場合、取得原価の算出方法として6つの手法から選択できます。それぞれ計算方法やメリット・デメリットが異なるため、自社の業務実態に合った方法を選ぶことが重要です。ここでは、各手法の特徴を整理して紹介します。

  • 個別法
  • 先入先出法
  • 総平均法
  • 移動平均法
  • 最終仕入原価法
  • 売価還元法
手法 概要 メリット デメリット
個別法 個々の商品ごとに取得原価を把握し評価する方法 正確な原価把握が可能、高額商品に適している 管理が煩雑、大量商品には不向き
先入先出法 先に仕入れた商品から先に払い出されたと仮定する方法 実際の物の流れに近い、期末在庫が時価に近くなる 物価上昇時に利益が大きく計上される
総平均法 期間全体の平均単価で評価する方法 計算がシンプル、価格変動を平準化できる 期末まで単価が確定しない、期中管理に不向き
移動平均法 仕入れの都度、平均単価を再計算する方法 リアルタイムで単価把握可能、価格変動に対応しやすい 計算が煩雑、システム化が必要
最終仕入原価法 期末に最も近い仕入単価で評価する方法 計算が最もシンプル、実務負担が少ない 正確性に欠ける、税務上の制約あり
売価還元法 売価から原価率を用いて逆算する方法 大量の商品を効率的に評価できる 原価率の設定が難しい、商品グループ単位での管理が必要

このように評価方法によってメリットやデメリットが異なるため、自社が扱う製品によって、評価方法を適切に選ばなければなりません。

自社に適した評価方法の選び方

評価方法の選択は、業種や取扱商品の特性、管理体制などを総合的に考慮しておこなう必要があります。最適な方法は企業ごとに異なるため、自社の状況を正確に分析したうえで判断することが求められます。ここでは、評価方法を選ぶ際の3つの視点を解説します。

  • 業種別の適した評価方法
  • 取扱商品の特性による選択基準
  • 事務負担とのバランス

業種別の適した評価方法

業種によって取り扱う商品や在庫管理の方法が異なるため、適した評価方法も変わってきます。自社の業態に合った方法を選ぶことで、より効率的な在庫管理が可能となります。

製造業では、原材料の価格変動を適切に反映できる移動平均法や総平均法が多く採用されています。 小売業では大量の商品を扱うため、売価還元法や最終仕入原価法が実務的に選ばれるケースが多いのが特徴です。

卸売業では先入先出法が物の流れに合致しやすく、飲食業では消費期限管理の観点からも先入先出法との親和性が高い傾向にあります。業界の慣行も参考にしながら検討を進めることを推奨します。

取扱商品の特性による選択基準

商品の価格帯や価格変動の度合い、取扱数量などによっても、最適な評価方法は異なります。商品特性を踏まえた選択が、正確な原価把握と効率的な管理の両立につながるのです。

高額商品を扱う場合は個別法が適しており、宝石や不動産、美術品などの業界で採用されています。 大量の商品を扱う場合は、個別管理が困難なため総平均法や売価還元法が現実的な選択肢となります。

価格変動が激しい商品を扱う場合は、移動平均法によってリアルタイムで単価を把握することで、収益管理の精度を高められます。

事務負担とのバランス

評価方法の選択にあたっては、計算の正確性だけでなく、日常の事務負担やシステム導入の必要性も考慮すべき要素です。理想的な方法であっても、運用が困難であれば継続的な実施は難しくなります。

最終仕入原価法は計算が最もシンプルで、中小企業を中心に広く採用されています。 一方、移動平均法は精度が高い反面、仕入れの都度計算が必要となるため、在庫管理システムの導入が前提となるケースが多いのが実情です。

自社の管理体制や人員配置を踏まえ、継続的に運用可能な方法を選択することが重要です。将来的なシステム化の計画も含めて検討を進めることを推奨します。

棚卸資産の評価方法の届出について

棚卸資産の評価方法は、税務署への届出によって正式に決定されます。届出をおこなわない場合は法定評価方法が適用されるため、自社に適した方法を選択したい場合は所定の手続きが必要です。

  • 法人設立時に届出が必要
  • 評価方法の変更時にも届出が必要な場合がある

法人設立時に届出が必要

法人を設立した際、棚卸資産の評価方法を選択する場合は、設立第1期の確定申告期限までに「棚卸資産の評価方法の届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。届出をおこなわなければ、法定評価方法である最終仕入原価法が自動的に適用されます。

届出書には、採用する評価方法のほか、棚卸資産の種類や事業所ごとの区分なども記載します。 事業内容に応じて、棚卸資産の種類ごとに異なる評価方法を選択することも可能です。

設立時は業務が多忙になりがちですが、届出期限を過ぎると変更手続きが必要となるため、早めの対応を心がけることが大切です。

評価方法の変更時にも届出が必要な場合がある

一度届け出た評価方法を変更する場合は、変更しようとする事業年度開始の日の前日までに「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。

評価方法の変更は、正当な理由がなければ原則として認められません。 事業内容の変更や合併、システム導入による管理方法の変更など、合理的な理由が求められます。

また、変更が承認された場合でも、一定期間は再度の変更が制限される場合があります。評価方法の選択は長期的な視点で慎重におこなうことが重要です。

在庫管理システム(WMS)で棚卸業務を効率化

棚卸資産の評価は、手作業でおこなうと多大な時間と労力がかかります。在庫管理システム(WMS)を導入することで、計算の自動化やリアルタイム管理が可能となり、業務効率と精度を大幅に向上させられます。

  • 手作業による課題を解決できる
  • WMSによる自動計算・リアルタイム管理で棚卸しを効率化
  • 移動平均法などの複雑な計算も自動化

手作業による課題を解決できる

手作業による棚卸業務では、計算ミスや転記ミスが発生しやすく、正確な評価が困難になるケースがあります。とくに移動平均法のような複雑な計算方法を採用している場合、人的ミスのリスクは高まります。

また、棚卸作業には多くの時間と人的リソースが必要となり、本来の業務に支障をきたすことも少なくありません。 繁忙期と棚卸時期が重なると、従業員の負担は一層大きくなるのが実情です。

評価方法の選択においても、手作業での対応を前提とすると、計算がシンプルな方法に限定されがちです。結果として、自社に最適な方法を選べない状況に陥る可能性があります。

WMSによる自動計算・リアルタイム管理で棚卸しを効率化

WMSを導入することで、各評価方法に基づいた棚卸資産の評価額を自動計算できるようになります。入出庫データがリアルタイムで反映されるため、常に最新の在庫状況を把握することが可能です。

先入先出法や移動平均法など、手作業では煩雑になりがちな計算も、システムが自動で処理します。 これにより、評価方法の選択肢が広がり、自社に最適な方法を採用しやすくなるのです。

さらに、期末だけでなく任意のタイミングで在庫評価額を確認できるため、月次決算や経営会議での活用も容易になります。

移動平均法などの複雑な計算も自動化

移動平均法や総平均法は、計算の精度が高い一方で、手作業での運用には限界があります。WMSを活用すれば、仕入れの都度自動的に平均単価が再計算され、常に正確な評価額を維持できます。

人的ミスを排除することで、財務情報の信頼性が向上し、監査対応もスムーズになります。 計算根拠がシステム上に記録されるため、後からの検証や説明も容易におこなえるのが利点です。

業務効率化によって生まれた時間は、在庫の最適化や仕入れ戦略の検討など、より付加価値の高い業務に充てることが可能です。結果として、経営判断の迅速化にも寄与します。

まとめ

棚卸資産の評価方法は、企業の利益計算や税務申告に直結する重要な会計処理です。原価法と低価法の違いを理解したうえで、先入先出法や移動平均法など6つの計算方法から自社に適した手法を選択する必要があります。

評価方法の選択にあたっては、業種特性や取扱商品の性質、事務負担とのバランスを総合的に考慮することが重要です。法人設立時や変更時には税務署への届出が必要となるため、計画的な対応が求められます。

在庫管理システムを活用すれば、複雑な計算の自動化やリアルタイムでの在庫把握が可能となり、より精度の高い経営判断につなげられます。自社の状況を見直し、最適な評価方法と管理体制の構築を検討してみてはいかがでしょうか。

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