在庫滞留とは？過剰在庫との違いも解説
在庫滞留と過剰在庫は混同されがちですが、それぞれ異なる概念です。改善策を検討する前に、まずは両者の違いを正確に理解しておきましょう。
- 在庫滞留の基本的な定義
- 在庫滞留と過剰在庫の違い
在庫滞留の基本的な定義
在庫滞留とは、一定期間にわたって商品が動かず、倉庫内で長期保管され続けている状態を指します。需要変動の見誤り、発注過多、SKU（在庫管理単位）の拡大など、複数の要因が重なることで発生します。
たとえば、季節商品がシーズン終了後も売れ残っている場合や、新商品投入によって旧商品が棚に残り続けている場合などが典型的な例です。
滞留品は時間が経過するほど販売機会を失い、最終的には値下げロスや廃棄ロスにつながる可能性が高くなります。早期に滞留を発見し、適切な対策を講じることが重要です。
在庫滞留と過剰在庫の違い
過剰在庫と在庫滞留は似ているようで、本質的に異なる概念です。両者の違いを整理すると、以下のようになります。
| 項目 | 過剰在庫 | 在庫滞留 |
| 定義 | 必要量に対して数量が多すぎる状態 | 商品が動いていない状態 |
| 焦点 | 数量の問題 | 回転率の問題 |
| リスク | 保管コストの増加 | 販売機会の喪失、廃棄リスク |
過剰在庫は「量が多すぎる」という状態を表すのに対し、在庫滞留は「動いていない」という状態を表します。在庫滞留は過剰在庫の一部ともいえますが、より深刻な「販売機会が失われている状態」に近いといえるでしょう。
たとえば、人気商品を大量に仕入れた場合は過剰在庫になりますが、需要があれば徐々に消化されていきます。一方、需要がなくなった商品は在庫滞留となり、そのまま放置すれば損失につながります。
在庫滞留が発生する主な原因
在庫滞留が発生する原因は多岐にわたります。自社の課題を特定し、効果的な対策を講じるためには、まず原因を正しく把握することが重要です。
ここでは、在庫滞留を引き起こす主要な5つの原因について解説します。
- 需要予測の精度不足
- SKUの増加・品揃え過多
- 発注業務の属人化
- 在庫データの不一致
- 商品のライフサイクル管理不足
需要予測の精度不足
在庫滞留の最も大きな原因の一つが、需要予測の精度不足です。想定よりも売れない商品は、そのまま滞留在庫となりやすく、廃棄リスクを高めます。
たとえば、季節要因やプロモーション効果、外部環境の変化などを適切に反映していない予測は、発注量の誤りを招きます。過去の実績だけを参考にした予測では、市場の変化に対応できません。
また、新商品の需要予測は特に難しく、過大な期待から過剰な発注をおこなってしまうケースも少なくありません。
SKUの増加・品揃え過多
新商品の追加や品揃えの拡大によって、SKUが増加することも在庫滞留の原因となります。商品数が増えると陳列スペースが分散し、売れ筋商品が埋もれてしまうことで、全体の回転率が低下します。
ECサイトやアパレル業界では、顧客の多様なニーズに応えるために商品ラインナップを拡充する傾向がありますが、管理が行き届かないと滞留在庫の温床となります。
品揃えの充実と在庫効率のバランスを取ることが求められます。
発注業務の属人化
発注業務が特定の担当者の経験や感覚に依存している場合、在庫滞留が発生しやすくなります。担当者ごとに判断基準が異なると、発注量にばらつきが生じ、結果として過剰な在庫を抱えることになります。
また、担当者が異動や退職した場合、発注ノウハウが引き継がれず、在庫管理の精度が大幅に低下するリスクもあります。
組織として発注ルールを明文化し、属人化を解消することが重要です。
在庫データの不一致
システム上の在庫数と実際の在庫数に差異がある場合、適切な補充判断ができなくなります。棚卸し時の誤差や入力ミスが積み重なると、本来不要な発注をおこなってしまい、結果として在庫滞留につながります。
たとえば、システム上では在庫が少なく見えるために追加発注をおこなったものの、実際には十分な在庫があったというケースは珍しくありません。
データ精度の向上は、在庫滞留を防ぐための基本的な取り組みです。
商品のライフサイクル管理不足
シーズン商品やトレンド商品の終売判断が遅れると、在庫滞留が発生します。販売計画の修正が間に合わず、需要がなくなった商品を抱え続けることで、廃棄ロスのリスクが高まります。
特にファッション業界や食品業界では、商品のライフサイクルが短いため、適切なタイミングでの見切り判断が求められます。
市場動向を常に把握し、柔軟に販売計画を修正する体制の構築が不可欠です。
在庫滞留が企業にもたらすリスク
在庫滞留を放置すると、企業経営にさまざまな悪影響を及ぼします。単なる在庫の問題にとどまらず、資金繰りや業務効率、さらには売上機会にまで影響が波及します。
ここでは、在庫滞留がもたらす4つの主要なリスクについて解説します。
- 資金の固定化
- 保管コスト・作業コストの増加
- 値下げロス・廃棄ロスの発生
- 欠品リスクの増大
資金の固定化
売れない在庫は、資金を固定化させます。仕入れに投じた資金が回収できないまま倉庫に眠り続けることで、キャッシュフローが悪化し、新たな仕入れや投資に回せる資金が減少します。
特に小売業や卸売業では、在庫が資産の大きな割合を占めるため、滞留在庫の影響は深刻です。資金繰りに余裕がなくなると、成長機会を逃すだけでなく、最悪の場合は経営の存続にも関わります。
保管コスト・作業コストの増加
滞留在庫は倉庫スペースを占有し、保管コストを押し上げます。また、棚卸し作業や入出庫作業の効率も低下し、結果的に労働負荷の増加につながります。
限られた倉庫スペースを滞留品が占めることで、新商品の保管場所が確保できなくなったり、作業動線が複雑化したりすることもあります。
見えにくいコストですが、長期的には大きな負担となります。
値下げロス・廃棄ロスの発生
在庫滞留が長期化すると、最終的には値引き販売や廃棄処分を余儀なくされます。滞留品の増加は低利益商品の割合を高め、企業全体の粗利率を低下させる要因となります。
特に食品や化粧品など、消費期限や使用期限がある商品では、タイムリミットがあるため、早期の対応が不可欠です。廃棄コストも発生するため、二重の損失となります。
欠品リスクの増大
一見矛盾するようですが、在庫滞留は欠品リスクも高めます。滞留品が倉庫スペースを占有することで、売れ筋商品の保管場所や補充スペースが圧迫され、本来売るべき商品の在庫が不足しがちになります。
また、滞留在庫の管理に追われることで、売れ筋商品への注力が疎かになり、機会損失が発生することもあります。
在庫滞留の解消は、攻めの在庫管理を実現するためにも重要です。
在庫滞留を改善する方法
在庫滞留の原因とリスクを理解したうえで、次は具体的な改善方法を見ていきましょう。重要なのは、一時的な対処ではなく、継続的に改善サイクルを回せる仕組みを構築することです。
ここでは、企業が実践できる代表的な改善方法を5つ紹介します。
- 需要予測の見直し
- ABC分析による重点管理
- 発注ルールの再構築
- SKU整理・終売判断の迅速化
- 棚卸し制度とデータ精度向上
需要予測の見直し
需要予測の精度向上は、在庫滞留を防ぐための根本的な対策です。売上履歴だけでなく、季節性、プロモーション計画、市場トレンドなどを継続的に分析に反映させることで、予測精度を高められます。
近年では、AI需要予測ツールを活用する企業も増えています。過去データのパターン分析に加え、外部要因も考慮した高精度な予測が可能になり、発注量の最適化に貢献します。
予測の見直しは定期的におこない、実績との乖離を検証することが重要です。
ABC分析による重点管理
ABC分析は、在庫を売上貢献度や回転率に応じて分類し、重点管理をおこなう手法です。一般的な分類は以下のとおりです。
| 分類 | 特徴 | 管理方針 |
| A品 | 重要度が高く、回転率も高い | 欠品防止を最優先 |
| B品 | 標準的な回転率 | 定期的な在庫確認 |
| C品 | 低回転率、滞留リスクあり | 削減・終売を検討 |
C品の見直しを徹底することで、滞留在庫の大部分を解消できる可能性があります。限られたリソースを効率的に配分し、在庫管理の最適化を図りましょう。
発注ルールの再構築
属人的な発注業務を改善するためには、発注ルールの再構築が必要です。定量発注方式や定期発注方式を見直し、SKUごとに最適な発注ロジックを設定することで、発注精度が向上します。
たとえば、リードタイムや需要変動の大きさに応じて安全在庫を設定したり、発注点を明確に定めたりすることで、担当者に依存しない発注体制を構築できます。
ルール化された発注プロセスは、在庫滞留の予防に効果的です。
SKU整理・終売判断の迅速化
滞留しやすい商品を定期的に棚卸しし、SKUの整理をおこなうことも重要です。売れ行きの悪い商品を早期に特定し、終売判断を迅速化することで、滞留在庫の発生を未然に防げます。
SKUを圧縮することで、売れ筋商品への注力度が高まり、全体の回転率が改善します。また、管理負荷の軽減にもつながります。
定期的なSKUレビューを制度化し、組織的に取り組むことが求められます。
棚卸し制度とデータ精度向上
在庫データの精度向上は、在庫滞留を早期発見するための基盤となります。循環棚卸しを導入し、定期的に実在庫とシステム在庫の差異を確認することで、誤差を最小化できます。
データ精度が向上すれば、滞留の兆候を早い段階で把握でき、迅速な対策が可能になります。また、発注判断の精度も向上するため、過剰発注の防止にも効果的です。
棚卸し作業の効率化には、システムの活用が有効です。
在庫滞留を解消するなら「COOOLa」がおすすめ
在庫滞留の解消には、リアルタイムで在庫状況を把握し、データに基づいた管理をおこなえる仕組みが不可欠です。そこでおすすめしたいのが、クラウド型倉庫管理システム（WMS）「COOOLa」です。
COOOLaは、株式会社ブライセンが提供する倉庫管理システムで、入出庫管理、在庫管理、棚卸管理など豊富な機能を搭載しています。情報を登録すると約2秒でリアルタイムに反映されるため、常に正確な在庫状況を把握できます。
導入企業の中には、数日かかっていた棚卸し作業が1日で完了するようになった事例や、ピッキング時間を10分の1に短縮した事例もあります。在庫状況の可視化により、滞留在庫の早期発見と迅速な対応が可能になります。
また、柔軟なカスタマイズ性を備えており、企業ごとの業務フローに合わせた運用が実現できます。創業40年以上の実績を持つシステム開発会社が手掛けているため、導入後のサポート体制も充実しています。
在庫滞留の課題を抱えている企業は、ぜひCOOOLaの導入を検討してみてください。
まとめ
在庫滞留は、資金の固定化や保管コストの増加、値下げロス・廃棄ロスの発生など、企業経営に多大な影響を及ぼす課題です。需要予測の精度不足やSKUの増加、発注業務の属人化、データの不一致、ライフサイクル管理の不足など、複数の原因が絡み合って発生します。
改善のためには、需要予測の見直し、ABC分析による重点管理、発注ルールの再構築、SKU整理の迅速化、棚卸し制度の強化といった取り組みが有効です。重要なのは、一時的な対処ではなく、継続的に改善サイクルを回せる体制を構築することです。
在庫滞留の解消には、リアルタイムでの在庫把握とデータに基づいた意思決定が欠かせません。自社の状況を正確に把握し、適切な対策を講じることで、在庫効率の向上とキャッシュフローの改善を実現できるでしょう。
