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WMSとERPの違いとは?使い分けやWMS連携のポイントを解説

2024.02.01

システム

物流業界の企業においては、労働力不足からくる人材難やトラックドライバーの労働時間の上限規制から起きる諸問題「物流2024年問題」、物流量の増加などを背景に、業務効率化が求められています。生産性を落とさず、効率的な物流を実現するため、物流管理システムにより管理を自動化する取り組みが進んでいます。

この記事では、WMS(倉庫管理システム)とERP(企業資源計画)の違いを解説し、使い分けやWMSとERPの連携ポイントをご紹介します。
自社に最適なシステムを選ぶ参考にしてください。

ERPとは?

ERPは「Enterprise Resource Planning」の略で、日本語では「企業資源計画」の略で、組織全体の業務プロセスを一元管理するためのソフトウェアシステムのことを表します。

ERPでは企業全体の様々な機能や部門(財務、人事、製造、調達、サプライチェーンマネジメント、顧客関係管理など)を一元化し、業務の合理化、効率の向上、リアルタイムでの情報把握を実現します。

WMSとERPの違い

WMS(倉庫管理システム)とERP(企業資源計画)は、物流や経営の効率化を支援するシステムですが、目的や適用範囲が異なります。

以下では、目的、機能、適用範囲、システム連携、コストと導入の5つの観点から違いを簡潔に解説します。

目的

WMSは倉庫内の物流業務に特化し、在庫管理や入出荷、ピッキングの効率化・正確化を目指すものです。
倉庫作業の自動化と可視化を重視しています。

一方でERPは、企業全体の業務プロセスを一元管理し、財務、人事、製造などの部門を統合し、経営の最適化を目的とするものです。

機能

WMSの機能はリアルタイム在庫管理、入出荷管理(検品・ピッキング)、ハンディターミナルによる自動化、フリーロケーション管理、誤出荷防止など。

対してERPは財務会計、人事管理、製造、調達、顧客関係管理(CRM)、サプライチェーン管理、経営データ分析などの機能を備えています。

適用範囲

WMSは倉庫や物流センター内の業務に限定されています。EC事業者、物流企業、製造業の倉庫、小売の配送センターに適用されることが多いです。

それに対しERPは、企業全体の複数部門をカバーしています。大規模製造業、多国籍企業、サービス業など全社管理が必要な企業に適用されるのです。

システム連携

WMSはERPやECプラットフォームと連携し、倉庫データを共有します。物流の一部として機能するため、幅広い連携が可能です。

対してERPは、WMSを含む複数システムを統合し、企業全体のデータ基盤として機能します。

コストと導入について

WMSについて、クラウド型は低コスト・短期間導入が可能です。
そしてオンプレミス型は高コストでカスタマイズ可能となっています。

ERPは高コストで導入期間が長く、全社的なプロセス変更を伴っています。

WMSとERPの比較表



WMS(倉庫管理システム) ERP(企業資源計画)
目的 倉庫内の物流業務の最適化 企業全体の業務プロセス一元管理
主な機能 在庫管理、入出荷、ピッキング、自動化 財務、人事、製造、調達、CRM、データ分析
適用範囲 倉庫・物流センター 企業全体(複数部門)
システム連携 ERPや他システムと連携 WMSを含む複数システムを統合
導入コスト クラウド型は低コスト、オンプレは高コスト 一般的に高コスト、カスタマイズ費用大


WMSとERPの導入目的とメリット

WMSとERPの大きな違いは、管理の範囲と目的にあります。WMSは倉庫内作業全般をカバーし、ERPは組織の業務プロセスの管理をします。
それぞれの目的とメリットをご紹介します。

WMSの導入目的

WMSが目指すところは、商品の在庫管理や入出荷管理を一元的に行うことで、業務を一部自動化し、少ない人員でも効率的かつ迅速に業務を行えるようにすることで業務効率化につなげることにあります。
また、同時に人為的ミスの削減を実現できるため、サービス品質向上につなげることも目的の一つです。

WMSのメリット

①倉庫内業務である入出庫、検品、ピッキング、梱包などの一連の作業の業務効率化を実現。
②人為的ミスを削減でき、サービス品質向上に寄与。
③リアルタイムの管理が可能になり、迅速な意思決定が可能。
④人的・時間的コスト削減につながる。

ERPの導入目的

ERPが目指すところは、組織内の異なる部門や機能を統合することで、情報の断片化を解消し、全体の業務プロセスを効率的に連携させることを目的とします。

ERPのメリット

①さまざまなビジネスプロセスや機能を統合し、全体の業務を合理化。
②効率の向上と組織の様々な側面に対するリアルタイムな可視性を提供。
③統一されたデータベースにより情報の一元管理が可能。
④業務プロセスの効率的な改善が可能。

物流業務にERPが必要な理由

物流業務において、ERPはどのような導入メリットがあるのでしょうか。導入が必要な理由には以下のようなものがあります。

1.効率的な在庫管理

ERPシステムは物流全体の在庫量をリアルタイムで把握し、適切な在庫レベルを維持することが可能です。これにより、過剰在庫のリスクを減少させ、欠品による機会損失を防ぐことができます。

2.物流データの一元管理

物流業務で発生する、注文情報、出荷情報、在庫情報、顧客情報など、多岐にわたるデータを一元管理することで、情報の整合性を保つことができます。ERPシステムはこれらのデータを統合し、リアルタイムでアクセス可能にするため、情報の遅延やミスを防ぎます。

3.コスト削減

ERPシステムの導入によって物流業務の自動化と効率化が進むと、人手による作業が減少し、人件費やミスによるコストを削減することができます。また、物流プロセス全体を最適化することで、輸送コストや保管コストも削減することが可能です。

4.データ分析と意思決定のサポート

ERPシステムは大量のデータを収集・分析する機能を持っています。これにより、物流業務のパフォーマンスを詳細に分析し、改善点を見つけ出すことができます。また、予測分析を行うことで、将来の需要を予測し、適切な戦略を立てることが可能です。

WMSとERPの使い分け

WMSとERPは、目的や管理する業務範囲の違いがあるため、管理したい業務と目的に合わせて選ぶ必要があります。倉庫内作業全体を管理したい場合はWMSを、組織全体の業務プロセスを管理したい場合はERPを選択するとよいでしょう。
最近ではERPで物流を含む組織全体の業務プロセスを管理し、倉庫管理の部分をWMSで管理するという企業も増えてきました。

WMSとERPを連携させるメリットとWMS連携の方法

WMSとERPの連携による倉庫(在庫)管理におけるメリットは、物流データがリアルタイムでERPからWMSに共有できることです。これにより、入出荷の情報や在庫情報の把握が可能になり、業務効率が向上します。また、トレーサビリティが向上し品質管理や顧客満足度の向上にも繋がります。一方で、ERPとWMSの連携は技術的な難易度が高く、そもそも連携できないWMSも多くあります。そのため開発技術に長けているWMSベンダーを選ぶことが、WMS連携を成功させるポイントです。また、既に稼働しているERPとWMSを連携させるため、問題が起きてしまうと物流業務全体に支障が出てしまいます。このような場合、長期化する可能性もありますので、WMS連携の実績が豊富なベンダーを選ぶことも重要です。

WMSとERPの連携方法

WMSとERPの連携方法として多いのがAPI連携とCSVによる連携です。

API連携(API integration)

異なるソフトウェアアプリケーションやサービス間で、相互に情報をやり取りするためにAPI(Application Programming Interface)を使用するプロセスや手法のことです。
API連携を行うことで在庫状況や注文状況などがリアルタイムで反映されるのでWMSによる効率的な倉庫・在庫管理が可能となります。

ただし、APIの開発やメンテナンスにはコストがかかることと、どちらかのシステムに障害が起こった場合、連携が中断される可能性があるので対策が必要です。

CSV連携

異なるソフトウェアアプリケーションやサービス間で、相互に情報をやり取りするためにCSV(Comma-Separated Values)を使用するプロセスや手法のことです。
API連携に比べてフォーマットがシンプルであり、様々なプログラムやツールで利用可能であるため比較的行いやすいとされています。
また、APIの開発やメンテナンスといった高度な技術を必要としないため、手軽で柔軟なデータのやり取り手段となります。

ただし、API連携と比較するとリアルタイムでの処理ができないため、在庫状況や注文状況の反映に関しては若干のラグが発生してしまいます。

WMSと連携できるその他システム

WMSと連携できるシステムはERP以外にもたくさんあります。
ここではその一例をご紹介します。

1.ECカート、EC基幹システム、ECモール

WMSはEC系のシステムとも連携することができます。これらをWMS連携することで、在庫情報とECシステムを連携することができ、在庫管理や出荷処理を正確に、スピーディーに行うことができます。

ECシステムとWMSの連携事例(株式会社DNPコアライズ様)

2.物流システム(WES、WCSなど)

WMS以外の物流システムと連携することで、倉庫業務の自動化や、作業進捗の可視化、リソースの最適化など、倉庫業務全体の効率化を図ることができます。

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3.自動倉庫などの倉庫設備

自動倉庫などの既存の倉庫設備と連携することも可能です。自社開発のWMSから乗り換える場合などが該当しますが、こちらも連携できる技術力を持ったWMSベンダーを選ぶことが重要になります。

自動倉庫とWMSの連携事例(昭文社ホールディングス様)

まとめ

近頃、弊社にもERPとWMSの連携に関するご相談が増えてまいりました。ERPにて倉庫・在庫管理をしていたものの専門のシステムではないため、現場の方の作業と一致しない、システム自体が複雑化してしまっている、かゆいところに手が届かないといった話が大半です。
そこにWMSを導入することで効率的な倉庫・在庫管理をすることが可能です。クラウド型WMS「COOOLa」はCSVでの連携はもちろんのこと、API連携に関しても多数実績がございます。

また基本機能とオプション機能が充実しているほか、柔軟なカスタマイズ性を有しており、ERPでできないこと・やりたいことがある方はまず一度お問い合わせくださいませ。

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